チルノが勉強を始めた
公園に散歩をしにいく。この公園にはほぼ毎日通っている。特になにをするでもないのだが、晴れの日は木漏れ日がまぶしく、静かで快適なベンチが僕の特等席だ。
しかし、今日は先客がいた。あの羽はチルノちゃんの羽だと遠目に見てもすぐにわかった。
「やあー、なにをしてるんだい?」
「あっ、今日も会ったなー!さんすうやってるんだけど・・・よくわかんない・・・。」
算数。そうか、チルノちゃんは見た感じ小学生。人間の小学生が勉強しているのに興味をそそられても不思議じゃない。
「どこがわからないんだい?」
「あのね、紅魔館からバスがでて、3人のるのね。」
「うん。」
紅魔館?
「そしてね、白玉楼で1人おりて、半人だけのるのね。」
「うん?」
は、白玉楼・・・?
「さいごに、八雲さんちで2人おりるんだけど、残りはなんにん?って問題なんだー・・・。」
八雲さんち・・・どこだ・・・。
「うーん、3 + 1 - 1 - 2 で1人だけ残るんじゃないかな?」
" 半人 " なるものを1人としてカウントしていいのかはわからないが、順当にいけば1人ではないだろうか。そして知らぬ地名が出てきたが、これははたしてなんなのだ。
「でもさー、幻想郷にバスなんてないのよねー。バスがないんじゃのれないんだから、この問題の意味がわかんない。ぜろ人じゃないの?」
幻想郷、きっとチルノちゃんの故郷のことだろう。それにしても、バスがないなんて相当の田舎だが・・・。
「もしも幻想郷にバスがあったら、きっと1人が残ると思うよ。」
「でも、ないもんはないじゃん!」
「たしかに、これは算数の問題が悪いね。幻想郷にバスがないのなら、ちょっと想像するのが難しいかもしれないね。」
「あたい、そろそろ飽きてきたなー。常識こえたら真理があるんだよ。」
難しいことを言い出した。なにかに影響されたのだろうか。
「まあ、チルノちゃんにはチルノちゃんなりに向いてるものがあるものさ。例えば、ほら。チルノちゃんは空を飛べるけど、数学者は空を飛べない。チルノちゃんは空を飛ぶ天才みたいなものさ。」
「そっかー!あたい天才かー!」
気分がよさそうにふよふよと飛びはじめた。
「あたいってばさいきょーね!」
木漏れ日が照らす。今日は、ふたりぶん。